2019/02/13
東京都産業労働局が平成30年2月に「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」を公表しました。この調査によると、退職金制度があるという会社は71.3%、退職金制度がない会社は24.2%でした。
【参考】東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」
退職金制度を導入することにより、従業員の定着がよくなったり、福利厚生が手厚くなることで人を採用しやすくなるということが考えられますが、その一方で、退職者が出ればまとまった金額を払わなければならず、退職時期も予想できるものではないことから、退職金制度の導入は会社にとってリスクともなりえます。従業員さんに喜んでもらうのであれば、10年、20年先の退職金よりも、毎年の賞与で成果をダイレクトに還元したり、毎年少しずつでも必ず昇給していくという方法もあります。
退職金の支払いは、使用者の義務ではなく、退職金制度をつくらないことも問題ありません。コストとリスク以上に、会社にメリットを与えるかどうかを検討したうえで、退職金制度を導入するかどうかを決定してください。
退職金制度を設けた場合は、労働条件の一つとなりますので、労働基準法第15条の労働条件の明示の明示事項となりますし、就業規則(退職金規程という別規程でもかまいません)にも記載する必要があります。
退職金制度を導入する場合、退職金の支給額の計算方法も会社で決めることができます。「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」によれば、退職一時金の算出方法でもっとも多い(44%)のは、「退職金算定基礎額×支給率」です。また、「退職金算定基礎額」は「退職時の基本給」としているところが38.1%、「退職時の基本給×一定率」としているところが32.7%であり、退職時の基本給を元にしている企業が多くなっています。
こうした退職金の計算方法は、従業員側から見ると、やめる時の高い給与を元に計算されるのでよいのですが、企業側から見た場合には、何年、何十年も先に、いついくらの支払いをしなければならないのか確定できず、負担が大きな制度と言えます。
退職金制度を持ちたいけれど、会社の負担を少なくしたいという場合には、中小企業退職金共済(いわゆる中退共)や選択制確定拠出年金の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
中退共とは、厚生労働省所管の独立行政法人が運営している退職金制度です。中退共に加入した場合、会社は毎月掛け金を払い、退職があったときには中退共から直接従業員に退職金が払われるため、会社で退職金の積み立てが足りているかどうかなどを考える必要がありません。中退共の注意点としては、原則として従業員全員が加入しなければならないこと、短期間で従業員が辞めてしまった場合には掛け捨てになってしまうことがあること、退職従業員に直接支払われるため、懲戒解雇等でやめてもらう場合にも、退職金の不支給や減額できないことなどがあります。
選択制確定拠出年金とは、企業型確定拠出年金の制度の作り方のひとつです。就業規則(給与規程)で確定拠出年金のための新たな手当を設定し、その手当を従業員自身が確定拠出年金の掛金として拠出するか、前払退職金として給与に上乗せして受けとるかの選択を行います。給与の一部を減額して掛金のための手当を設定する方法が一般的であり、従業員の掛金に会社が上乗せの補助を出すことも可能です。この制度を利用すれば、会社が大きな負担をすることなく退職金制度の導入ができます。掛金を拠出した場合は、課税支給給与や社会保険の標準報酬月額の等級が下がるため、税や社会保険料が安くなるというメリットもあります。ただし、社会保険料が安くなる分、将来もらえる年金額は少なくなりますし、出産や傷病で健保から手当をもらう場合には、その支給額も少なくなります。
従業員さんのことを思って、退職金制度をつくろうというお考えは素晴らしいことだと思います。退職金はもちろんよいですが、それだけにこだわらず、給与(毎月の給与や賞与)や福利厚生など、全体としてみて、どのような制度にするのが会社にとってよいのか考えてみてください。
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